「エチオピア」のビーフカレー
驚くことにサラリーマンが昼食に掛ける平均的な時間はおよそ21分程度らしい。
俺は松屋でさえ悩む。
勿論、最初は牛丼のつもりで入店する。
しかし、“牛丼の口”を抉じ開けるように目に飛び込む魅力的な数々の商品。
散々時間を掛け、店先で悩んだ挙げ句、カレーを頼んでいる。
いいとこ、カレー牛が関の山だ。
(ネギ玉牛丼が良かったかなぁ…)
とか全くもって後の祭り。
無意味な逡巡の後、気付けば40分くらいは経っている。
「40分は盛すぎだし、計算が合わない!嘘松!!」
と思われるかもしれないが、それは早合点だ。
何故なら松屋にたどり着く前にも悩んでいるからである。
大概ネパール人がやってるカレー屋と悩んでいる。
そう、牛丼屋に入りつつも、無意識下ではカレーを求めているのだ。
飯を食うだけなのに、ディズニーランドのガジェットコースター(しょぼくて小さくてやたらと横Gがかかってヘッドレストに頭を強打しがちなアレ)並みに並んでいる人間がまともな職につけるのか。ゾッとしてきた…
とは言いつつも、やはり“栄養補給”のような食事は虫が好かない。
だとするならば、ソイレント(完全栄養食)でも作って飲み干してればいいのだから。
そしてそういったオートメーションと対極にあるのがインドカレーなのだ。
提供が大概遅い。
何もかもが熱い。
割と奥まったところにあったりする。
ナンを無限に食わせようとしてくる。
ラッシーをやたらと勧めてくる。
そして半ば強制のラッシーが割と高い。
そもそもそんな安くない。
……
だが、これでいい。
ロハスだのヴィーガンだのより、よっぽどスローフード感がある。
全然違うラッシーが来たり、どこも似たような味だったりするが、今のところそういうのにブチギレている人は見たことがない。
なんというか、ちょっとした日常における余裕がないと食べられない。
現に食いに行った今、俺のメンタルは悪くないし。
と、前置きが長くなりまくったが、ようやく有名店に行けた。
電車を乗り継ぎ、クソさみい外で待ち、お金を崩してもらうときに凄まじく冷たい視線を浴びせかけられながらありついたカレーだ。
結論から言えば、めちゃめちゃ「勉強になる」味わいだった。
言ってしまえば、、俺はカレーマニアでもなんでもなく、“美味しいカレーを家で食いたい”だけなのだ。
そんな訳で超有名店くらいは何軒か行ったことがあるのだが、どれもこれも“店で食うからうまい味”な気がする。
根強いファンのいる他の有名店は、確かに美味しいことは美味しいのだが、エグみやクセ、難解さが奥底にあるような気がする。
「カレーの有名店だぞ」という自負が滲み出ていると言えばいいだろうか。
俺が欲しいのは“家で作って美味いカレー”なのだ。
そういう点、エチオピアはなんというか包容力がある味わいで親しみやすい。
スパイスが本格的なのは言うまでもないが、クセが少なく、爽やかでしつこくない。
おそらくペーストの野菜や果物がベースだと思うが、旨味と甘味とコクが第一にあり、スパイスがそれをまとめ上げている。
辛さも控えめ(忙しいから適当だった説もある)で、最大公約数的な美味しさがあったと思う。
誤解を恐れずに言えば、「カレー好きが家で作るこだわりカレーの臨界点」ではないかなと感じた。
Bobby Humphreyの記事より真面目になってしまった。
カレーで食っていこうと思います。